タイトル ガンジー自伝
著者 マハトマ・ガンジー
訳 蠟山芳郎
発行 中央公論新社
言わずと知れた”インド独立の父”。
本名はモーハンダース・カラムチャンド・ガーンディー。(1869〜1948)
マハ(偉大な)+トマ(魂)=聖者に与えられる敬称で民衆から敬愛された。
勤勉な弁護士であり、ヒンドゥー教の敬虔な信者であり、政治指導者であった。
アヒンサー(非殺生…ガンディーは”他者に害を与えない”という意味合いで使用した)の思想、
サッティヤーグラハ運動、塩の行進、反英運動等で有名なガンディーの自伝。
イギリスの圧政や不平等な統治法に反対し、イギリス政府への非協力運動、
不買運動、ボイコット等のサッティヤーグラハ運動を大胆に行なっていた渦中、
当局に騒擾(そうじょう)罪で逮捕・投獄されている間に書き始めた著書。
1926年頃に書き上げられました。
ガンディーの名声が高まり民衆のナショナリズムが高まってきて、
活動がより政治性を帯び、有力な政治家との関わりが深くなってきた1920年頃までで筆を置いています。
同胞の政治家への配慮のため、それ以上は書く気にならなかったと言います。
つまり、彼がカリスマ性を帯び、
インド全土に強い影響力を持っていた激動の後半生については知る事ができません。
どちらかと言うと、ガンディーの思想や心理を知る事に適しています。
(誕生〜暗殺されるまでの全容を知るためには別の伝記を読む必要があると思います。
このシリーズでいずれ取り上げる予定です)
ガンディーの人物像や思想、そして偉業の中心にあった精神性を知る事ができる一冊。
民衆から”マハトマ”と敬称され、彼が行く所には、
聖者同様にダルシャン(祝福)を受けに人々が集まる。
ヨガや瞑想を極め人々に祝福を与える聖者のように接せられるが、
神に近づくために山に籠ったり、社会生活や義務を放棄して出家したわけではない。
(カストゥルバ夫人と結婚し、子をもうけている)
弁護士という仕事に従事しながら、
南アフリカやインドの農村で支配され無力に陥っている人々に
勇気を与え指導し、その地道な活動がインド全土に自治・独立の機運をもたらした。
ガンディーの中心には常に、両親から継承されたヒンドゥーの教えと
それに基づいた確固たる信念があった。
それはバクティヨーガと言われる人々(の中にいる神)への奉仕の道で、
煩わしい社会生活から離れずに修行する苦難の道である。
(ラヒリ・マハサヤを始め、この時代のインド聖者達は一般社会の中に身を置くことが多かったようである)
彼は政治的社会的に大変な影響力を持っていたが、
熟達した政治家ではなく、生粋の求道者であり改革者であった事が読み取れる。
その探究心や並外れた意志の強さ、動機の純粋性は正に聖者である。
この本を読んでいくと、たくさんの名言に出会います。
自分なりの名言を探してみると面白いと思います。
*私が感銘を受けた言葉とガンディーの思想をよく表している論文を
(日本に原爆が投下された後に新聞に掲載したもの、訳者が後書きにて紹介した)
別ページに抜粋しています。