このシリーズの要所のまとめと追記です。
◆生物としての基本的欲求を司る部位がベースにあり、
それらを制御する大脳は、後から必要に応じて発達した。
◇脳の進化は突然変異ではない。
◆脳は現在も進化の途上である。
2.本能とストレス
◆危機だと判断しストレス状態に置かれた脳では、
自己制御を司る前頭前皮質の働きが低下し、
基本的欲求を司る大脳辺縁系が活発になる。
◇これは生物が生存競争から生き延びるための反応である。
○ドーパミン
報酬への期待を感じた時に産生される。【パブロフの犬】
○前頭前皮質
意思決定、計画、判断、欲求・感情・行動の制御等の高度認知機能を司る。
○扁桃体
不安や恐怖の感情中枢。
刺激を受けるとストレスホルモンを放出する。
◆報酬への期待で胸が高鳴りワクワクするのと同時に、
報酬の対象への集中が高まり、報酬を逃すまいと、
神経や筋肉が緊張し力が漲る。
呼吸や心拍数も上昇する。(ストレス状態)
◇目先の報酬に夢中になり未来への影響を考えづらくなる。
また、周辺視野は狭まり、周囲への配慮や
メタ認知(客観視)に回すエネルギーは残っていない。
◆本能を司る部位が活発化しているので、
衝動的になり、感情に流されやすくなる。
◇行動の動機付けに重要な役割を担う報酬回路は、
あらゆる商業的場面で刺激を受ける。
ある実験で、【2001年 ブライアン・クヌットソン】
人が実際に報酬を受け取って、満足感や喜びを感じている時には、
報酬回路は沈静化したままである事がわかりました。
つまり、ドーパミンが出ていなくても
満足や喜び、幸福を感じる事があるという事です。
また、マウスによる動物実験では、
脳の報酬系を破壊されたマウスでも、
砂糖を与えると満足や喜びを感じるという事がわかっています。
(ドーパミンが放出されないから、砂糖を認識しても飛びつかない)
ドーパミンが動物を行動に駆り立てるための物質だという事がよくわかります。
幸せの予感と幸せは別物だという事でしょう。
さて、目標達成が困難な理由を脳の機能から
見てきましたが、いかがだったでしたか。
人間も動物だから本能に打ち克つ事などできないのでしょうか。
目標を成し遂げる人々は、生物として特別な突然変異体なのでしょうか。
ここまで読んだ方はお分かりの通り、答えは”否”です。
ただ、自己制御のための練習と訓練が必要です。